11月23日(水祝)から28日(月)まで、上野の森美術館ギャラリーにおいて「ビーズアートジャパン大賞2011」コンテストの入賞作品を含んだ作品展示が行われ、11月24日(木)には表彰式とレセプションが開催されました。今回は、そのレセプションパーティーで行われた「審査員トークショー」の模様をお伝えしましょう。
MCは「ニットの貴公子」でお馴染みの広瀬光治先生。広瀬先生の講演はどこでも人気で、いつも会場を沸かせます。見事な構成と、各話し手へのバランスのよい振りに加え、時間ぴったりに終わらせるテクニックはまさに「トークショーの達人」。宴席で多少お酒が入っていたのと、楽習フォーラムに慣れているせいか、いつもより少しざっくばらんな話し方でした。ちょうど私たちの真ん前のメインテーブルでステージに背を向けて座っていらした桂由美先生まで話題にしてしまうところはさすが。実はこのとき桂先生はちょうど小龍包を口に入れようとしていたところだったのですが、広瀬先生の一言で全員の注目を浴びてしまいました。私も広瀬先生の話に合いの手を入れて桂先生に話しかけてしまったので、気分を害されたのではと心配になり後でみなさんに様子を聞いたところ、少女のようにかわいらしい顔ではにかんで笑っていらしたそうです。桂先生って本当に素敵な女性です!
さて、本題に戻りましょう。トークショーで最初に審査の感想を述べたのが、コスチュームジュエリー研究家の渡辺マリ先生でした。マリ先生が審査で最も重要視されていたのが、このコンクールの必須条件である「コスチュームジュエリーであること」。マリ先生いわく、「コスチュームジュエリーは本来着る人とその服を引き立てるものであって、それ自体が目立つだけのものはコスチュームジュエリーとは言えない」。審査のときも大ぶりな作品に出合うたびに、マリ先生にコスチュームジュエリーかどうかをお訊ねすると、「これを身に着けて外を歩けますか?」という言葉が返ってきます。アートとして素晴らしい作品でも、このコンクールの主旨であるコスチュームジュエリーでない場合には、残念ながら評価は下がります。マリ先生が審査員特別奨励賞に選んだ作品は、今回の応募作品の中で最もコスチュームジュエリーらしいものでした。
マリ先生がコスチュームジュエリーではないとした数点の作品に対して、「いや、これもコスチュームジュエリーだと思う」とご自身の意見をはっきりと述べられたのが、桂由美先生のコスチュームジュエリー制作を担当する藤原綾子先生でした。パリコレクションなどステージで見せるコスチュームジュエリーを制作してきた藤原先生にとっては、普通の人が派手だと思うものでも着こなしによっては立派なコスチュームジュエリーとなるのです。藤原先生自身が大胆なデザインのコスチュームジュエリーを普段から着こなすことができる方だということもあるのでしょう。藤原先生が審査員特別奨励賞に選んだ作品は、大きな金魚がモチーフになっており、審査途中ではコスチュームジュエリーと呼べるかどうかの議論がありました。でも藤原先生が身に着けてみると、少しも違和感がなくてよくお似合いになっていたので、みなさん納得。
私たちがトコトンこだわったのが、「実際に身に着けてみてどうなのか」ということ。本審査の間中、作品をトルソーにかけてみたり、自分で身に着けて鏡を見たりと大忙しでした。
(女性陣に交じって加山忠則先生も試着されていました!まるでヨーロッパの貴公子のようです)
確かに置いてあるときと身に着けたときでは、その良さも悪さも変わります。展示会場で作品を見た方の中には、「なぜこの作品が上位ではないのか、なぜこの作品が賞をもらえたのか」と思った方も多かったはず。でも、トルソーにかけてライトアップされた状態と、実際に身に着けた状態とではかなり印象が違うものも多かったのです。「写真美人」「トルソー美人」「ライトアップ美人」「ボディー美人」などいろいろありますが、今回は「ボディー美人」であることに焦点を合わせて審査されています。
広瀬光治先生の審査員特別奨励賞は、広瀬先生ならではの視点で選ばれた作品です。ネックレス部分が見事なマイクロマクラメで作られていました。細い糸でビーズを入れながら編むマイクロマクラメは、アメリカで数年前から話題になっています。
私が選んだ審査員特別奨励賞は、一見地味な作品です。テーブルの上に置いてあったときには羽根つきや独楽など日本のお正月が題材なのね、程度の感想でした。でも身に着けたとき、この作品が立体的になり、突然呼吸し始めました。この写真は本審査直後に撮影されたものです。何時間もなりふり構わず審査し、お化粧も取れて疲れ果てていた私に、この作品は一瞬にして元気をくれました。子供の頃家族で過ごした楽しい記憶がよみがえり、黒一色の暗い洋服をぱっと華やかにしてくれました。私にとってはまさに「元気に美しくしてくれたコスチュームジュエリー」です。
この作品を作られた柳原美津枝さん、元気をありがとう!副賞に差し上げたビーズステッチのキットは、アメリカのビーズ作家、ローラ・マッケイブのものです。ローラは東日本大震災の義援金集めに行われたトーホーのチャリティーにたくさんのキットを提供してくれました。6月にアメリカで会ったときに、ローラがどれほど日本のことを心配していたか。ローラの思いを伝えたくて、表彰式ではローラの作品を身に着けました。私を含め、日本中の女性がもっともっと元気で美しくなるように、私も頑張ります!
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