Gakusyu forum With Me ― 私と楽習フォーラム ― 

ご縁に支えられたお教室。
講師として自立し、生きがいを持つことができた

天野昌枝先生(アトリエ豊玉)

高知県でモードジュエリーを中心にお教室活動を行う天野先生。介護と仕事の両立という目まぐるしい期間も、生徒さんに楽しんでもらうために精一杯活動されてきました。そこには、天野先生がかつて受けたという恩を周りの方々へ還元し、周りの方々もまた先生に恩返しするという優しい感謝の循環がありました。

 

モードジュエリーを着けると「どこで買ったの?」と声をかけられた

―楽習フォーラムとの出会いをお伺いできますか。

当時、専業主婦だったのですが、子育てが終わった頃に義理の母の介護が始まってしまいました。新たに仕事を始めることもままならず、介護をしながら家で何かできないかと思案に暮れていた中、友人でもあり師匠でもある長尾久仁子先生より、モードジュエリー認定講座のお誘いを受けました。
介護をしながら在宅で活動できるし、高知県では初のモードジュエリー講師になれるとのことで、ぜひ挑戦してみようと思いました。

長尾先生は大阪を拠点にされていたのですが、大阪まで行けなかった私のために、月1回、高知まで通って講座を開いてくれたんです。1年後、無事にモードジュエリー認定資格を取得することができ、長尾先生には感謝してもしきれないご厚意をいただきました。この御恩と経験を少しでも社会に還元したいと思い、高知で講師としての活動を精力的に行うことを決意しました。


―長尾先生よりモードジュエリーのお話を聞いて、どんなことを感じられましたか。

モードジュエリーの作品を見せていただいたらとてもワクワクしました。実際に講座の作品を着けて外出すると、行く先々で周りの方が「どこで買ったんですか?」と声をかけてくださったんですよ。今までビーズのアクセサリーを着けていて声をかけられることなどなかったのに。モードジュエリーのような、今までのビーズにはない雰囲気のアクセサリーは当時の高知では珍しかったんだと思います。「買ったのではなく作ったんです」と言うと皆びっくりしていました。

ですから最初は作り方を教えるよりも制作依頼の方が多くて、認定作品を何個も作って販売していました。そのおかげで技術を習得することができ、講師の立場になっても教えやすかったと思います。


 

専業主婦から講師の道へ。 自立と社会貢献、生きがいを持つ喜び

―お教室活動で心がけていることは何でしょうか。

お教室では「楽しい」と思っていただけるように、「生徒と講師」の関係だけではなく、人として関わり合えるようなコミュケーションや、環境作りを心がけています。美味しいコーヒー、おやつにも気を使っています。

今は自宅教室を中心に、あとはマザーズキッチンさんというキッチン用品を中心に扱う雑貨屋さんでお教室を開催しています。経営者の方がお友達で声をかけてくださいました。マザーズキッチンさんもお客様を呼べるし、生徒さんがビーズ教室の後にショッピングもしてくれるので、お互い相乗効果がありました。日頃からお世話になっているので感謝の気持ちを込めて、マザーズキッチンさんが毎年主催されるクリスマス料理教室では、お客様が使われるテーブルナプキン用のナプキンリングをビーズで作ってプレゼントさせていただいています。


―講師になられて「変化した」と思われることは何でしょうか。

自立と社会貢献、そして生きがいを持つことができたことです。私は22歳で主人と結婚して30年近く主婦をしていたので、社会との関わりも薄く、経済的にも主人に頼って生きてきた人生でした。

楽習フォーラムとの出会いで、講師としての自立、余合ナオミ先生のワークショップ開催や生徒さんとの作品展などを通して社会と関わり、自らの手で作品を作ることができるという生きがいを持つことができました。何よりも生徒さんから『ありがとう』の言葉をたくさんいただけることが嬉しかったです。

▲ 高知で余合ナオミ先生のワークショップを開催

 

ご主人の介護をしながら一心不乱に作り続けた

―ご活動を続ける中で、大変だったことは何でしょうか。

講師2年目の時、主人がくも膜下出血で倒れ、命は助かったものの後遺症のため社会復帰ができなくなり、主人の介護もしなければならなくなりました。経済的にも主人に頼っていたので、外に働きに行くにもビーズ以外の資格もなく、今あるのはビーズ教室しかないなと思ったんです。

そんな中、私の状況を知った生徒さんたちが一生懸命休まずに受講してくださったり、友人たちが作品のオーダーや新たな生徒さんを紹介してくださったりして、たくさんのご支援をいただき、1日も休むことなくお教室活動を続けました。

主人が退院してからの2年間くらいは、物凄くしんどかった時期もありました。主人は後遺症で高次脳機能障害を背負ってしまい、今まで日常的にできていたことを1から教えないとならなくなりました。
寝る時もずっと主人に付き添っていたのですが、急に主人のスイッチが入ると人が変わったように、真夜中に車いすに乗って外に出て行こうとするんです。それを私は覆いかぶさって止めて、毎日がバトルでした。その発作が収まると寝るのですが、出て行ってしまうとどこに行ったか分からなくなるので一晩中探し回って…。

ほとんど寝ていない状態だったのですが、お教室は普通にこなしていましたね。とにかく必死にひたすら目の前にあるものをこなすという感じで。夜にお風呂に入ると、急に現実がワーッと押し寄せてきて泣くこともありましたが、大変だと思う暇などなくあっという間に時間が過ぎたように思います。だからその頃の2~3年の記憶があまりないんです。今思うとよくやってましたね。現在はデイサービスを利用して、その間に仕事ができています。多くの方々のご厚意で乗り越えることができたので、本当に感謝しています。

 

コスチュームジュエリーを広めたい! お寺で開催する展示会・販売会

―天野先生は、コスチュームジュエリー展示会や販売会に力を入れているそうですね。

生徒さんが創作意欲を持てように、全員参加で、どんな作品でもいいのでオリジナルを作って皆に見てもらいましょう、と展示会や販売会を開催しています。毎回200名以上の方々に足を運んでいただき、作品の鑑賞や購入を楽しんでいただいています。

昨年からは、要法寺さんというお寺さんとご縁ができ、和室をお借りして開催しています。要法寺さんもちょっと敷居を低くしたいそうで、いろんなイベントをやってみたいとのことで。

和室からは素敵な日本庭園を眺めることもできるんですよ。昨年は、枯山水のパフォーマンスや和楽器の演奏も行って、生徒さんもお客様も癒される会になりました。ご好評をいただき、毎年要法寺さんで開催させていただけるお話になりました。

生徒さんも作品の発表や販売ができるということが、さらなる活動意欲につながっているように思います。また、モードジュエリーやコスチュームジュエリーをご存知なかった方々にも興味を持っていただき、新しくご入会いただくきっかけになっていると思います。


―生徒さんの作品をご覧になったお客様は、どのような感想を話されますか。

「こういうものを求めていた」と仰る方がいらっしゃいます。宝石を使ったジュエリーは持っているけれど日常的には使わないので、ジュエリーの代わりにお洋服に合わせて着けられる、でも安っぽいものは着けたくないということから、高級感のあるコスチュームジュエリーが高知では人気ですね。

毎回、販売も盛況で生徒さんたちも驚いて、イベントが終わってからすぐ「今から来年の作品を作ります!」と1年かけて準備してくださっている生徒さんもいらっしゃいます。今はコロナ禍でもありますので、感染者数によって延期や中止も考えなければならず計画通りに進められないのが心苦しいですね。今年の展示販売は10月開催に向けて準備を進めており、プロのピアニストによるコンサートや、お寺のお茶室でお茶を振る舞うことなども計画しています。


―今後の目標をお伺いできますか。

一人でも多くの方に物作りの楽しさを知ってもらうこと、そして物作りを通じて、人と人とのご縁を結んでいただくことです。私にとってそれが最高の幸せだと思っております。

 

Column

 

天野先生の心に残るキット
ワイヤーでフラワーパーツをつくる ライラックブーケのブローチ

初めて楽習フォーラムで作らせていただいた自分の名前の入ったキットです。予算も使用できる材料も限られる中、何をどう作ればいいのか私の中でグチャグチャになってしまった時、余合ナオミ先生にヒントをいただいて形になりました。思っていた以上に大変でしたが一生の思い出になりました。教える時は自分のデザインを意識していないのですが、生徒さんのほうが『先生がデザインした作品を買いたい』と意識してくださいます(笑)。

Voice   生徒様の声

 

生徒さんたちに慕われ、周りに人が集まる求心力をお持ちの先生

(高石美香様/高知県)

高校の同級生だった天野先生とは、お料理教室で卒業以来ン十年ぶり!の偶然の再会をしました。高校生の頃の素朴な少女が、お洒落で素敵なマダムに変身していて、実は、天野先生に声をかけられた時、最初は誰かわからなかったのですよ(笑)
後日アトリエに伺い、素晴らしい作品の数々に魅せられて、すぐに「教えてちょうだい!」とお願いしました。
天野先生は、たくさんの努力をして積み上げてこられた技術と知識を惜しみなく教えてくださる大らかなお人柄で、生徒さんたちにもとても慕われていらっしゃいます。 年齢を重ねてきた今、こんな風に楽しめる趣味ができたことを大変嬉しく思い、誘ってくださった天野先生には感謝しております。
高校時代の友人たちも何人もお教室に通っていて、作品展の時には観に来てくれた同級生たちとミニ同窓会のようになることも。周りに人が集まってくる求心力をお持ちの先生です。

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