Gakusyu forum With Me ― 私と楽習フォーラム ― 

PTA活動で輪織りバッグ作りを企画。作ることで喜んでもらえたら嬉しい

坂本久美先生(Maturely)

オールアバウトライフワークスで実施した経済産業省補助事業講師募集に手を挙げていただき、当事者への講習を担当いただいた坂本先生。その体験から、輪織りバッグ作りをPTA活動で提案し、キットを用意して全生徒さんに配布したそうです。「悩む前に自ら動く」と語る坂本先生は、新たなお教室の形にもトライしています。

経済産業省補助事業…経済産業省「認知症共生社会に向けた製品・サービスの効果検証事業(2020~2022年)」のこと。オールアバウトとして採択され、MCI/軽度な認知症の方を対象に認知機能低下抑制や「生きがい」を持っていただける趣味教室の事業化をオールアバウトライフワークスが企画し、全国複数の自治体をはじめ病院や介護施設の協力のもと、事業化に向けた検証を行った。集められたデータをもとに公的機関で分析し、学会や論文の発表を行っており、国や多くの企業団体からその成果に注目いただいている。

 

手作りが好きな方は、いくつになっても作ることができる

―経済産業省補助事業の、認知症当事者の方向けに行うレッスン実証では、坂本先生には講師として積極的にご協力いただきました。ご協力の理由をお伺いできますか。

義父母の介護が始まって義父が認知症だと分かり、認知症の方とハンドメイドの関係に非常に興味を持ち始めました。義父はもともと無趣味でハンドメイドとは無縁だったのですが、少しでもハンドメイドに興味があれば違ったのかもしれないと思い、講師として申し込みました。


―実証では、どのような方にレッスンを行われたのでしょうか。

レッスンは利用者さんのご自宅に訪問する形で行いました。利用者さんのうちのお一人は、普段はデイケアに行かれる以外は、ベッドに座って過ごされるという、おとなしい感じのおばあさまです。

ハンドメイドがお好きだったのか、作り方を説明すると躊躇することなく黙々と作られて、難しくない教材はほとんどご自身で作ることができて驚きました。
嬉しそうに作るといった表情はなく言葉数も少なかったのですが、その方の娘さんとしては手を動かして欲しいというご希望があったようなので、その部分では満足だったようですね。

もう1名の別の利用者さんは、一見では分からないくらいの軽度の認知症のおばあさまでした。時々、同じ話をされることもありましたがそこまで気にならず、作りながら雑談もされて、完成すると楽しかったと仰ってくださいました。

利用者さんからの反応があってもなくても、普段から自分の周りにも高齢の方がいらっしゃるので、教えるのが難しいといったことはなかったです。

また実証で扱う教材がビーズだけではなくて、花や紙、ひもなど様々な素材があり、種類の豊富さに驚きましたし、その一つひとつを丁寧に教えることは新鮮でした。
経済産業省補助事業のテーマは高齢化が進む日本にはピッタリだと思います。高齢者対象のレッスンを早く実現化させてほしいと思っています。

▲フェイクフラワーのポットアレンジ(デザイン/ウェルネス教材開発チーム)

 

誰でも手軽に作れる輪織りバッグをPTA活動で提案

―教材の一つであった「輪織り」を使って、坂本先生もお子様の学校でご活動をされたそうですね。

輪織りは実証レッスンのために初めて作りました。道具や材料、工程がユニバーサルデザインとして適しているように感じました。

私には少し発達が遅く、軽度の支援学校高等部に通う息子がいて、入学時からPTAとして携わっています。息子が2年生の時に、市からPTA活性化事業の補助金が出て、PTAで使い道を考える機会がありました。その時に輪織りバッグのことを思い出し、高齢の方が作れるなら軽度の障がいのある子どもも作れるのでは?と、輪織りバッグ作りを提案したら採用されました。

本当は学校生徒一同(約120名)を一箇所に集めてワークショップをしたかったのですが、コロナ禍のため無理でした。ですので、作り方の動画と説明書、材料一式のキットを準備して生徒全員に配ることにしたのです。

また、自分で提案したからには資格があるほうが質問にも答えやすくなると思い、すぐに通信講座で輪織りの資格も取得しました。


―どのようなキットを用意されたのでしょうか。

実証で使った輪織りバッグを参考に、デニムの端布をひも状にした素材と麻ひもを使い、バッグのサイズを変えました。
デニムの端布は、SDGsの考え方を子どもに教えるのにもちょうど良いかなと思って楽習フォーラムからまとめて購入し、その際、楽習フォーラムの菱倉社長が私の活動にご賛同くださって、輪織りの本を生徒一人ずつにプレゼントしてくださいました。本当にありがとうございました。


―作り方の動画や説明書のご用意も、大変だったことと思います。

学校の先生に手伝ってもらい作り方の動画を録画したり、他のPTA役員と一緒に、おりりん(輪織りの専用織り機)を段ボールで作ったり、シャトルも手作りしました。大変でしたが今となっては良い思い出です。

配布したキットを何名の方が作り上げたかまでは把握していませんが、それぞれのご家庭で、子どもさんや保護者の方、または親子で一緒にハンドメイドに取り組んでいただけたら幸いです。


―作る体験は、どんなことをもたらすと思われますか。

私自身はハンドメイドが大好きなので、イライラした時に作ると落ち着いて癒しになりますが、作ることが苦手な人にとってはイライラの元になると思うので、そこまでは求めていないです。
少しでも作ってみたいと思う方に、「作ってみたら意外と楽しかった」というその経験が、一日の中の喜びやリフレッシュにつながると嬉しいなと思っています。

自己満足かもしれないですがハンドメイドは私の得意分野なので、自分で率先して計画を立てて、なるべく他の役員さんの手を煩わせずにできることを進めていました。もともと一人でサッと動くタイプなので、悩む前に動いていた感じです。

個人的には今後はもう少しコロナが落ち着いたら、高齢の方を対象に輪織りバッグのワークショップを開いてみたいと考えています。



 

販売するからには、自分の作品に自信を持つ

―坂本先生が楽習フォーラムで学ばれたきっかけをお伺いできますか。

ビーズスキルの資格を取得したのは、書籍で学んだり、ビーズショップの見本作品制作のアルバイトなどで得た自己流のスキルで、資格が取れるか試してみたかったからです。

チェインメイルジュエリーは、九州から新大阪まで講習を受けに行きました。ゲネス多絵先生から直接教わることで、技術はしっかり習得できたような気がしています。
私は本を見ながら作ることが苦にならないので、通信講座で学ぶことも合っていました。しっかり教科書を読み込んで、動画も観ることで、通信講座でも作れるという実感があります。

最初にビーズスキルの資格を取得した後は、私がアクセサリーを作っているのを知った友人がイベントに誘ってくれて販売の機会を得ました。それが今後の活動や考えに大変プラスになりました。


―販売の体験を通してどのようなことを学ばれたのでしょうか。

販売をするなら作品に自信を持たないといけないし、自分が好きな作品が売れるわけでもありません。イベントに出るためにフェイスブックを作ることになって、そこからSNSも使えるようになりましたし、売るための準備や売り方を考え、宣伝しないとお客様は来ないことも学びました。

また、初めて参加したイベントで「作り方を教えて欲しい」というお客様がいらっしゃって、レッスンを始めました。近くのカフェで行い、月に4~5名くらいの小さな規模で楽習フォーラムの作品やオリジナルの作品を教えていました。のちにレッスン場所に使っていたカフェが閉店したのと義父母の介護が始まったため、一旦そのレッスンは閉じることにしたのです。


 

思い出作りとしてのハンドメイド。ニーズの変化を実感

―現在はどのような活動をされていますか。

「じゃらん」の遊び体験施設として登録し、簡単なアクセサリー作りの体験ができるレッスンを行っています。
素材にはシーグラスなどを使っています。穴のあいたシーグラスを見つけた時に、SDGsの観点としても「コレだ!」と思いました。シーグラスをメインパーツとして、モードジュエリーのワイヤーワークやチェインメイルの技術を組み合わせて、リングやピアス、ネックスを作る体験ができます。

コロナ禍で旅行が制限されていた頃、博多駅の近くでレッスンをしたことがあって、若い女性2名の観光客の方が来られたことがありました。そのお客様は、観光地を巡るというよりも、友達との思い出としてアクセサリーを作って、インスタ映えのするカフェに行くのだそうです。ハンドメイドも以前とは考え方が変わってきたのだなと感じました。

私が学んだ頃は、レッスン1から順番に毎週習うというのが主流だったと思うのですが、今後はそういった形ではないかもと思うところはありますね。
落ち着いたらもう少しレッスンの機会を増やして、マクラメも学んだので、マクラメのメニューも増やしたり、体験アクセサリーも季節ごとにバージョンを変えたいと思っています。


―今後の目標をお伺いできますか。

息子がこの春に卒業して私のPTA活動も終わるので、5月頃からは本腰を入れてハンドメイド関係に力を入れられそうです。レッスンやオリジナル作品作り、ウェブショップに力を入れていきたいと思っています。



 

Column

 

坂本先生の心に残るキット

レザーコイルのモノトーンネックレス
(デザイン 余合ナオミ)

モードジュエリーの資格を取得したのは、書籍の表紙に載っていたこの作品に惹かれ、自分で作りたいと思ったからです。ワンランク上のジュエリーに見えて、ビーズでこんなにも素敵な作品が作れるのかと驚きました。当時は画期的な作品だったと思います。

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