Gakusyu forum With Me ― 私と楽習フォーラム ― 

聞こえない人とハンドメイドは相性が良いので、
手話で教える場を作りたい

佐藤弥生様

マクラメジュエリー講座の第1期生として学び、現在は瞳硝子先生のお教室に通う佐藤弥生さん。
耳が聞こえないけれども熱心に学ぶ姿勢に、瞳先生は常に心を打たれていたそうです。
イベントに出店したり、手話でマクラメを教えたり、教え方を研究するなど、様々なチャレンジを行いながら、作品を作る時間を大切に楽しまれています。

 

先生のトークの中にも作り方のポイントがある

―現在は瞳硝子先生のお教室に通われているそうですね。きっかけをお伺いできますか。

瞳硝子先生とは、マクラメジュエリー講座の第1期生として受講してからのご縁です。
私はしゃべれるのですが耳が聞こえなくて、コロナ前のリアル講座が行われていた頃は、一番前の席に座って先生の口の動きを見て理解したり、音声を文字に変換するアプリを使用しながら受講していました。

ですがコロナ禍になって研修会もオンラインでの開催が主流になると、パソコン画面で口の動きを見ることは少し難しく、パソコンと音声認識アプリの接続が上手くいかなかったりして、私にとっては受講しにくい状況になっていました。
先生が何を説明されているのか分からないので、手元動画だけを見て作るしかなくて…。でも口頭だけで補足される説明ってありますよね。

またリアル講座だったら、一緒に受講する周りの方の動きを見て、次に何をするか分かることもあるのですが、オンラインレッスンでは周りの視覚情報がないことも大変でした。

そんなコロナ禍の中でビーズアートショーにたまたま行った時に、瞳先生とお会いすることができたんです。先生は「どうしてる?オンラインレッスンで分かる?」と心配してくださってて、先生の新しいお教室が西八王子にできたと聞き、すぐに通い始めました。


―瞳先生のお教室ではどのようなことを学ばれているのでしょうか。

はじめはマクラメ雑貨を習いました。もともとオンラインで受講していたのですが、分からないところがあって完成できなかったので、瞳先生に情報を補ってもらうため習うことにしたんです。

まずは真っ赤にメモ書きされた先生の教科書を渡されて、「この赤字のメモを全部自分の教科書に写しましょう」という作業から始まりました。
先生はいつもレシピにはない作り方のポイントを教科書に書き込むように教えられます。私はオンラインレッスンでその部分を聞けなかったので、やはり一言でもメモがあるとだいぶ違います。基本的にはレシピがあればどうにか作れると思うのですが、やはりポイントを把握して作りたいです。資格取得の審査に間に合うよう、頑張って仕上げました。

 

デザインフェスタ出店に挑戦

―マクラメ雑貨の認定作品の制作と同時進行で、デザインフェスタにも出店されたそうですね。

デザインフェスタには参加することを目的に、友達3人と一緒に出店しました。皆、作るものが違うんですよ。私はマクラメ作品で、他の3人は、ビーズで作ったピアス、つまみ細工、石膏を固めたアロマストーンなどです。それぞれが作れるものを持ち寄って参加しました。そのデザインフェスタの日と、マクラメ雑貨の審査の締め切りが重なってしまい、かなり焦りました。


―デザインフェスタではどのようなマクラメ作品を販売されたのでしょうか。

モップコードで作ったピアスやキーホルダーなどです。今回は売ることが目的ではなくて、参加することに意義があるとチャレンジしました。デザインフェスタは出店ブースも6000店以上あって、その中からお客様に足を止めて商品を見てもらうことがまず難しかったです。聞こえない女子4人での参加たったので、お客様とのコミュニケーション面でも課題がありましたが良い経験になりました。次の機会は何も決めていませんが、またやれるなら頑張ろうと思っています。皆に見てもらえるものを作りたいと思いますが、デザイン力がないのでデザインや色の勉強をしたいですね。


―どのようなデザインがお気に入りですか。

巻き結びが好きなので、巻き結びを使っていろいろなものを作れたらいいなと思います。瞳先生の作品キットは巻き結びが多いので作るのがすごく楽しいです。色は、青や緑など寒色系が好きな傾向があります。サッカー観戦が好きで、応援しているチームカラーが青系なのも好きな理由です。ユニフォームに合わせてチームカラーの色のひもでブレスレットを作りましたが、友達にも作り方を教えて欲しいと言われます。サッカーのチームカラーアイテムもマクラメで作っていきたいと思っています。

 

聞こえない人にもマクラメを教えたい

―マクラメのレッスンを行われたこともあるそうですね。

スタッフとして関わっている手話サークルで2~3回教えたことがあります。MUSUBIMEコレクション「左上平結びブレスレット~セージ~」のキットを使って、聞こえない方に教えました。
手話で教えることは難しいですね。結び方の手話表現もあまりないから、動画を見てもらったりしていますが、太いひもを使って目の前で結んで見せるのがいいのかな…と考えています。

教え方をもっと学びたいと思って、聞こえないハンドメイド作家さんがやっているワークショップに参加したことがあります。その方はパンチニードルを教えていて、生徒さんも聞こえないのですが、実際に刺しているところを一人ひとりに見せる教え方をしていました。視覚的な情報が一番大事になるので、実演なら分かりやすいのかなと思いました。


―他にも教えるのが難しかったことは何でしょうか。

近所にろう学校があり、週1回くらい放課後支援のスタッフをしていて、その小学生にマクラメを教える機会もありました。クリスマス前のある日、支援スタッフが足りず「放課後に何をするか決められない」と当日の朝に相談があったんです。私もどうしようと思って、家にモップコードのひもがたくさんあったので、それを使ってクリスマスツリーのキーホルダーを作ることを提案しました。

平結びだけで作る作品でしたが、小学校低学年の子には難しかったかもしれないですね。4年生以上の女子は1回教えたら感覚をつかんでくれたのですが、男子は「分からないからやって~」と言われ、一緒に作りました(笑)。

完成すると、ランドセルに付けてくれる子もいて、その後に親御さんが迎えに来られると「これ作ったんだよ~」と見せていました。その光景を見て、楽しかったし、またやりたいなと思いました。今年も何かのタイミングで作りたいねという話があるので、今度はもっと早くから準備して、低学年の子でも作れるものを考えたいなと思います。


▲小学生に教えたクリスマスツリーのキーホルダー

―様々なことにチャレンジされていますね。

他にも、「異言語Lab.」という団体の異言語脱出ゲーム(https://www.igengo.com/)にスタッフとして参加しています。手話を使って謎を解く脱出ゲームを作っていて、マクラメで過去に制作した作品を小道具として提供することもしています。



▲手話サークルで教えた「左上平結びブレスレット~セージ~」。参加者の皆様がきれいに完成。
 

マクラメを手話で教える教室を作りたい

―楽習フォーラムに入会する前と後で変化などありましたか。

基本的に作ることが大好きなので、好きなことに没頭できる時間を得られています。また、新しい技術を習うのも楽しいです。丁寧な指導をしていただいたおかげで、「こんなアクセサリーを作ってみたい」と考えるようになりました。

また、もともとはビーズステッチを学んで入会したのですが、その頃から作ることが好きでも完成したアクセサリーを身に着けることはあまりなかったんです。洋服とどう合わせたらいいのか分からなくて…。でも最近はせっかく作ったのだからと、少しずつ着けるようにしています。そういった気持ちの変化はあると思います。


―今後の目標をお伺いできますか。

手話で教えられる場所を作れたらいいなと思っています。聞こえない人とハンドメイドは相性がいいんですよ。視覚的な情報があれば作れますから、手芸をされる方は多いです。 私は教えるのがあまり得意ではないので今後の課題ですね。教え方を学ぶ機会があるといいなと思っています。

Message    先生からのメッセージ

 

熱心に学ぶ姿が印象的。
マクラメを通して世界を広げてくれたら嬉しいです。

瞳硝子先生(studio IZUMO/楽習フォーラム マクラメジュエリー講座、マクラメ雑貨講座カリキュラムプロデューサー・レッスン作品テクニカルデザイン)

マクラメジュエリー講座の第一期生として受講いただいた頃から、弥生さんはいつも一番前の席で受けてくださって、常に前向きに一生懸命に学ばれる姿が素晴らしいなと思っていました。 私の個展や百貨店でのワークショップにも頻繁に来てくれて、台風で大雨が激しかった日にも遠くから来てくれたことがあって、「大変だから早く帰りましょう」とお伝えしながらも、本当にありがたかったですよね。

コロナ禍で講座がオンライン中心になってからも、どうしているかな、作れているかなと気になっていました。特に私は、講座で教科書に書かれていないことも話しているので、ちゃんと分かってもらえているか心配でした。
配信でマスクをして口元を隠さなきゃいけないというのも、口元が見えないことで困る人がいることを菱倉社長に直談判して、マスクなしの配信にしてもらいました。

コロナ禍は、誰も悪くないのに自粛しなきゃいけない状況になってしまって、困っていても遠慮してなかなか伝えられいことがあったと思います。それでも、一つの大事な意見として声を挙げられることが大切なのではないかと思うのです。

弥生さんはマクラメでいろいろなことに挑戦されていて、すごいと思います。デザインフェスタは私も出店したことがあるのでよく分かるのですが、お客様に立ち止まってもらうことが本当に大変で、売れるかどうかはまた次の段階。まず見てもらうことが難しい。初参加の時は誰でもガーンと衝撃を受けると思います。
でも女子4人で参加して本当に素晴らしいし、よく頑張ったし、良い挑戦だったと思います。そこから立ち直った後、次の仕掛けを考えられるようになります。

小学生に教えたマクラメのクリスマスツリーも、当日の朝に思いついて実行するのはすごいですね。低学年の子どもでも結びやすいものはあるので一緒に考えましょう。 異言語脱出ゲームのスタッフ参加など、マクラメを通して世界を広げたり、人とつながる活動を続けてもらえたら私も嬉しいです。

photo三輪浩光

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